刀部では模擬刀身のみの製作も承っており、有名な日本刀の特徴を模した観賞用の模擬刀身(写し製作)や不具合が生じた居合刀の交換用刀身としてお役立ていただくことが多いです。しかし中にはそうした武士が扱っていた日本刀の代替としての模擬刀身ではなく、先の大戦時につくられた軍刀の拵に合わせた模擬刀身製作のご依頼も多くいただきます。これまでご依頼をいただいた中から大きく特徴の違う3種の軍刀をご紹介します。

岡山県N様 軍刀拵合せ模擬刀身製作

岡山県N様 軍刀拵合せ模擬刀身

鮫皮を着せて研ぎ出し第二佩鐶・責金が付いた手の込んだ軍刀拵です。一見して元の所有者の階級の高さが窺えます。

軍刀拵合せの模擬刀身製作では棒樋無しが基本となります(ご希望に応じて棒樋を掻くことも可能)。小互の目刃文で模擬刀身を製作。模擬刀向け型はばきがうまく収まりました。旭日の立派な大切羽が付きます。

模擬刀身製作後の駐爪の動作は検討対象外とさせていただいていますが、この例ではきちんと駐爪が機能しました。駐爪とは刀身が抜けてしまうことを防止するものです。鞘口に開けられた穴に爪が掛かって刀身の脱落を防止します。

千葉県N様 軍刀拵合せ模擬刀身製作

千葉県N様 軍刀拵合せ模擬刀身

第一佩鐶のみに責金の付いた石目塗鞘の軍刀拵です。治具を使って拵の状態を確認をしたところ、柄・鞘ともに刀身や茎を収める掻き入れが短いことが分かりました。大刀が収まっているように見せたような拵です。

鞘には長脇差を収める程度の掻き入れしか彫られていなかったため、鞘の掻き入れ一杯の長さで模擬刀身をおつくりしました。樋無し、小互の目刃文です。模擬刀向けの型はばきは合わなかったため銅地一重はばきも新調しました。

本例でも駐爪はうまく機能しました。

静岡県K様 軍刀拵合せ模擬刀身製作

静岡県K様 軍刀拵合せ模擬刀身

鞘全体を黒い革で覆った軍刀拵です。お預かりをした時点ではばきが欠落していましたが、模擬刀向けの型はばきがうまく合いました。

樋無し、直刃刃文でおつくりした模擬刀身。金仕上げの型はばきです。

本例は駐爪がなく柄口に回した革と鞘を覆った革をボタンで留めて脱落を防止しています。

工房繁忙のため、現在模擬刀身の単体製作はお断りをさせていただくことが多いです。 ただご希望の内容や状況によってはお引き受けできることもありますので、よろしければご希望の方は一度ご相談ください。

模擬刀身単体のご相談はこちらから