無銘/64.7cm、柄前製作・鞘工作(居合作)

無銘/64.7cm、柄前製作・鞘工作(居合作)

昭和48年に新潟県で登録の御刀です。無銘刃渡り64.7cm、反り1.7cm。拵付き。
女性居合家の拵の柄前製作と鞘の一部工作をご依頼いただきました。持込をいただいた鍔・縁頭・目貫はすべての馬の図柄です。 これら刀装具に描かれる馬の合計が八頭であることから、中国の故事「穆王八駿」にちなんで本刀を号:八駿(はっしゅん)と名付けられました

鞘をお預かりした当初の状態では、栗形の位置に革が巻かれ吊環が付けられた状態でした。革はスライドしてかんたんに外すことができ、その下には栗形を付けるための切掻きが彫られていました。 この切掻きに新たに水牛の角で製作した栗形を取付け、鞘を打刀拵の様式に直しました。

鍔は馬の輪郭を残してその他を透かした放駒図。少し赤錆が出ていたのでかんたんに手入れして拵にしました。

柄の長さは7寸程度でのご提案を考えていましたがお預かりをした縁頭の寸法が小さかったことから手の小さな方だろうと推測し少し短めに製作をさせていただきました。 しかしご依頼者様はもともと付いていた柄の長さと同程度をお考えだったようで、ご迷惑をお掛けすることになってしまいました。 事前のお打合せでは絶えず柄長6寸5分とご提案をしていたものの、数値だけでは実感が湧きづらかったのかも知れません。現状よりこれくらい短いものを想定していますと表現を工夫するべきでした。 大変に勉強をさせていただきました。

柄巻は紺色の牛裏革で諸捻巻です。一の切(親粒の付く部分)の鮫皮に時代付けをして短冊に着せました。縁頭・目貫ともに馬の図柄です。

鞘には栗形を付けたあと、工作跡を目隠しするため腰部分だけを黒呂で塗り直しました。もともとの塗りは恐らく本漆の叩塗ではないかと思います。 塗りの境目が一文字では面白くないので斜切りに仕上げました。黒呂塗が刃方から棟方へ向かって伸び下がっていますので刀部では斜切り下げ(はすきりさげ)と呼んでご案内しています。(この逆の斜切り上げも承っています)

鍔に1頭、縁金の差表に2頭、差裏に1頭、頭金に2頭、表目貫・裏目貫にそれぞれ1頭で合計八頭の馬が刀装具中に描かれ、号:八駿の由来になっています。

“穆王八駿”について

『拾遺記』によると、大地を踏み荒らさず、飛ぶように走ることができる「絶地(ぜっち)」、猛禽(鳥)よりも速い「翻羽(ほんう)」、一夜で万里(5000km?)を走る「奔霄(ほんしょう)」、太陽の後を追って走ることができる「越影(えつえい)」、色鮮やかな毛を持つ馬で、光のように明るく輝く「逾輝(ゆき)」、余りの速さに10の影を持つ馬「超光(ちょうこう)」、雲に乗って走れる「騰霧(とうむ)」、翼を持つ「挟翼(きょうよく)」の8頭で構成される。説明の通り、これらは速さにちなんで名づけられていると考えられる。

Wikipedia「穆王八駿」より引用

工作内容詳細

※表示する価格は受注当時のものです

価格
70,000円台
御刀
無銘/64.7cm
ハバキ
現状のもの、内部の緑青を洗浄
切羽
現状のもの
持込品、責金
柄下地
製作(居合作)
柄長
6寸5分程度
柄地
鮫皮、短冊着(親粒付き、時代仕上げ)
柄巻
牛裏革・紺、諸捻巻(居合作)
縁頭
持込品
目貫
持込品
鞘下地
現状のもの
鞘塗
腰のみ黒呂塗で塗直し、斜に切り下げ
栗形
水牛角で製作、取付

お客様の声

先程、無事に愛刀が届きました。
早速開封し見せて頂きました。
柄前が元のものより短くなっているのは、刀の寸法に合わせた長さだからでしょうか?
私は手が小さめなので、これくらいかなーと思いつつ今までが長めを使っていた事もあって短く感じたものですから…。

紺のヌバック巻、とても良いです!
落ち着いた色で、この色にして良かったです。

鞘も綺麗になって来たのでとても嬉しく思います。

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