「なぜだか理由は分からないが、銅の価格が高くなってきている。困った。」
こんな愚痴を日頃お世話になっている白銀師さんから聞くようになったのは、2020年の暮れあたりからでした。

近年、経済の不透明感などから金(きん)の価格が世界的に上昇し、高止まりしていることはご存知の方も多いでしょう。
しかし最近は金だけでなく、銅をはじめとしたその他金属の価格も上昇傾向にあることはあまり知られていないのではないでしょうか。

居合刀(模擬刀)の製造に銅は欠かせません

模擬刀身の素材である亜鉛合金には銅が含まれます。
また、鉄や真鍮でできた鍔や縁頭などの刀装金具にも銅は必要です。
黒色に仕上がるものは銅メッキを黒く燻したものであり、銀色に仕上がるものの下地にもまず銅メッキがかけられるからです。
もちろん、銅そのもので製造される刀装金具も少なくありません。

このように居合刀にとって銅は必須素材ですから、その価格高騰は他人事ではありませんでした。

そんななかで追い打ちをかけるような噂話がさらに飛び込んできました。
「最近の銅の価格高騰の原因はハイブリッドカーや電気自動車の普及らしい。モーターに必要な銅線の原料を確保するため、世界中の自動車メーカーが銅を買い入れている。」
つまりエンジンを動力源とした自動車が減り、かわりにモーター(電動機)で走るクルマが多くなりつつあるため、そのコイルの巻線に必要な銅の需要の高まりが価格高騰の原因だというのです。

電気自動車の増加についてかんたんに調べてみると、すぐに多くの情報が得られました。
アイティメディア社が運営するモノづくりのポータルサイト[MONOist]が2019年に公開した記事によると、「2035年の乗用車の新車販売台数は、ハイブリッド車(HV)が2018年比3.4倍の785万台、プラグインハイブリッド車(PHEV)が同17.8倍の1103万台、電気自動車(EV)は同16.9倍の2202万台に拡大すると見込む。」とし、ハイブリッド車を電気自動車が上回るのが2021年だとしています。

この予測を裏付けるように、実際に世界では電気自動車の製造と普及が急激に加速しています。
総合自動車ニュースサイトの[レスポンス]では、2020年のトヨタの電気自動車比率が20%を超え、BMWも電気自動車の販売をさらに拡大させていると報じています。

また、JOGMEC(石油天然ガス・金属鉱物資源機構)が2021年1月に発表したレポートでは、銅の価格が約8年ぶりに高値を更新したと記しています。
ただし同レポートでは、2021年1月の高値更新をピークとして価格は緩やかに下落していることも知ることができました。

エンジン車と比べて二酸化炭素排出量の少ないハイブリッド車や電気自動車の普及・拡大は、昨今よく耳にするSDGsに関わる取組みの結果のひとつといえるでしょう。
そうであれば、銅の価格高騰は残念ながら一時的なものではなさそうです。

このような情報の断片を整理していくと、居合刀や刀装具の値上げは避けられそうにないところまできていると感じます。
問題は、そのXデーがいつか、ということでしょう。

実際に関市の模擬刀界隈では、次のような声も聞こえてきます。
「銅の価格高騰を受けた値上げはもう避けられない。でも銅の価格はいまも値上がり続けているから、すぐに値段が決められない。」

日本の商習慣として、即日値上げということはほとんどあり得ません。
おおむね1ヶ月前には価格改定の通知を受け取るのが通常ではないかと思います。
だとすれば、少なくとも今月(3月)いっぱいは現在価格での入手が可能でしょう。

3月以降にこれまで通りの価格で居合刀が入手できるかどうかは不透明です。
居合刀や刀装具の購入を検討されている方は、お早めの決断をおすすめします。

また居合刀や刀装具をお得に入手するには、刀部からのニュースレターを受け取ってください。
刀部では毎月月初に、その月限定で利用できるクーポンをお届けしています。

刀部オンラインショップのトップページ下部にある「刀部からのお知らせを受け取る」からメールアドレスが登録できます。
ぜひご活用ください。