古来より日本では優れたものや人に対して、名物・名所・名人などと「名」という文字を付ける習慣があります。
そのうち器物の名称に固有名詞としての「名」を冠して呼ぶ起源は非常に古く、三種の神器で知られる「八咫鏡(やたのかがみ)・八尺瓊曲玉(やさかにのまがたま)・天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)」と神話の世界にまで遡ります。
刀剣では、平安時代の平家累代の重宝「小烏丸」や鎌倉幕府初代執権である北条時政の「鬼丸」のように「丸」の称号を付けた「名」も多く存在します。日本最古の目利き書と目される「銘尽(京都・教王護国寺に伝来)」には、菊丸・蝶丸・御作丸・水細丸・桜丸・細切丸・御剣丸などをはじめとして、現在はすでに忘れ去られた銘が多数残ります。
鬼丸太刀図
鬼丸太刀図(wikipediaより)
こうした名刀・名剣の名に「丸」を付けて呼ぶことは、牛若丸(源義経)や日吉丸(豊臣秀吉)のようにかつて人の童子(幼子)に「丸」を付けたのと同じだという見方があります。
鎌倉時代には子どもは「七歳までは神のうち」などといわれ、人の力が及ばない神仏につながる力を持っていると考えられていました。桃太郎や金太郎のように、幼い主人公が超人的な能力で勧善懲悪する内容の童話が多いのもこうした考え方によるものかも知れません。
船舶の名には現代でも「日本丸」や「海王丸」のように「丸」を付けて命名されますが、船は海上において人の命を託すものであることから、「丸」に安全の願いを込めたのだろうという説があります。
同様に武器や武具も戦場において命を託すものであるため、そうした器物に人智を超えた力を与えたいと願う気持ちから「丸」という童名が付けられたと考えられています。
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参考資料:
  • 名物刀剣-宝物の日本刀-