無銘 28.1センチ、拵一式製作(標準作)
令和4年に静岡県で登録の御刀です。無銘。刃渡り28.1センチ。拵付き。
揃い図柄の一式金具を持込いただき松代拵の製作をご依頼いただきました。松代拵とは江戸時代の松代藩でつくられたお国振りで、拵に用いる金具がすべて真鍮地であることが特徴です。お預かりをした金具はいずれも表裏や天地で図柄が片身替になっています。関市の職人によれば、これは大垣拵にも見られる特徴だということでした。
御刀の再研磨のご依頼も合わせていただきました。お預かり当初は全体がぼんやりと曇っていましたが仕上げ直しにより匂口が冴えて明るい印象になりました。はばきは銅地に赤銅を着せた磨きはばきです。赤銅(しゃくどう)とは金と銅の合金で、紫がかったような何ともいえない黒色になります。
鍔は揃い図柄の喰出鍔です。と、ここで切羽の撮影を失念する痛恨のミスをしてしまいました…。銅地に薄い金を被せた金着せ切羽もおつくりしました。
実は当初、お預かりをした揃い金具は本刀にとって少々小さく拵の製作は難しいという判断でした。しかしこれだけの金具を揃えるのは大変だっただろうということで、各職人が精一杯の仕事をしてくれました。寸法条件的に非常に厳しく、とくにはばき・鍔・切羽の製作や工作は困難を極めたと聞きます。
赤黒色の正絹糸は当店の取扱品ではなく柄巻をお願いした職人の持つ柄糸です。非常に良い目貫だったため、通常とおりに目貫を入れず掛け巻にしてできるだけ図柄を出すよう職人が工夫してくれました。縁金は天地(刃・棟)、頭金は表裏で図柄が片身替になっています。
鞘は黒地に朱色の時雨塗で赤貝混じりの青貝を散らしています。パラパラと降る雨にキラキラと輝く雨粒のような美しい塗鞘です。鞘口はワカバがほとんどなく寸法的に余裕がない限度一杯の仕事だったことが読み取れます。 もともと小柄櫃・笄櫃の底も時雨塗のご希望をいただいていましたが、製作の途中でそれが難しいと分かり黒塗に変更をさせていただきました。せめて見どころをということで、単なる黒塗ではなく刷毛で青海波を描いています。
工作内容詳細
※表示する価格は受注当時のものです
- 価格
- 610,000円台
- 御刀
- 無銘 28.1センチ
- はばき
- 銅地一重赤銅着せ磨きはばき
- 切羽
- 銅地金着せ切羽(1ミリ厚)
- 柄下地
- 新作(標準作)
- 柄長
- 刃渡り合わせで姿良く
- 柄地
- 鮫皮 短冊着(親粒付き、時代色揚げ)
- 柄巻
- 赤黒色正絹細糸 諸捻巻(標準作)
- 目貫
- 持込
- 鞘下地
- 新作(標準作)
- 鞘塗
- 朱黒時雨青貝微塵塗(赤色貝混り)
- 工作
- 小柄櫃・笄櫃
- 金具
- 真鍮地揃い金具一式(持込)
- 白鞘
- 新作(標準作)
- 継木
- 木はばき付き
お客様の声
この度は松代拵を製作していただきありがとうございました。
昨日無事品物が届きました。
一部仕様変更がありましたが、鞘の塗りもイメージ通りに、また、柄も目貫が見えるように仕上げていただき、とても満足しています。
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