拵全体

どんな状態から、どうなるか

刀部では製作事例ページにて皆さまよりご依頼いただいた御刀をご紹介しています。
それとは別に、お預かりをした日本刀(真剣)の拵がどのような状態からどのような結果になるか一連の工作進捗をご紹介していきます。
先日、日本刀諸工作のご依頼をいただいた愛知県A様より進捗紹介の掲載例とさせていただくことにご快諾がいただけました。

今回は第1回として、ご依頼品の現状をご紹介します。

工作着手前の状態

このたびお預かりをしたのは 無銘/66.5cm の御刀とそれに付く拵の一式です。
愛知県A様は無双直伝英信流を学ぶ方で、吊るした短冊を抜きつけに切ることで刃筋を通す練習に使用するための御刀だと伺っています。
御刀と拵一式はネット通販で入手されました。
この拵の柄前の新調と鞘の修理をご依頼いただきました。

御刀

刃渡り66.5cm、反り2.0cm。 少し強めの反りがついた短めの御刀でです。
茎にいくつかの摩耗(鍔ズレ、研ぎ減り?)が確認されました。致命的ではありませんが、新調する柄への影響が多少懸念されます。

全体的に経年による劣化が確認できます。

金具

ハバキ

銅地の二重ハバキはそのまま使用することになりました。
貝先刃方に割れが確認できたものの御刀に付けてもガタはない状態です。

切羽

取り合わせの切羽が付いていました。
交換はせずそのまま使用することになりました。

鉄地木瓜形の透鍔が付いていました。図案化された勝虫(トンボ)の透かしだと思います。
ところどころに白錆が浮いていたためかんたんに手入れをして油を塗布したところご依頼者様にご満足いただけたため、この鍔を使用することになりました。 (手入れ前の写真は撮影することができませんでした)

柄前は一式新調をします。
ご依頼者様は縁頭の交換を希望されていましたが、ご予算などの都合により新しい柄にもこの縁頭を使用することになりました。 この柄の柄長は約7寸ですが、新しい柄は柄長8寸で製作します。

全体的に塗りの剥がれが確認できました。とくに鞘尻まわりの状態がひどいです。
ただし鯉口まわりに割れなどはなく、鞘師・鞘塗師と検討をした結果、修理可能と判断されました。 鞘は新調せず、この鞘を修理して使います。

塗りの剥がれた鞘尻には、V字状に鞘下地を継いだ跡が確認できました。
「恐らく鞘の内側にゴミが詰まって御刀がうまく収まらなくなったため、鞘尻を切って取り除いたのちに作り直したものだろう」というのが鞘師の見立てです。

このような状態の拵が関市の職人たちの手によってどのように生まれ変わるのか、次回もぜひご期待ください。