(金象嵌)兼光 66.3センチ、拵一式製作(鑑賞作)

(金象嵌)兼光 66.3センチ、拵一式製作(鑑賞作)

令和4年に東京都で登録の御刀です。(金象嵌)兼光。刃渡り66.3センチ、反り1.5センチ。白鞘入り
革包半太刀拵様式の拵一式をおつくりさせていただきました。合わせて古くなっていた白鞘の新調に加え、御刀を最上研磨にて小傷やヒケなどを一掃し良い状態にあらためさせていただきました。

鍔のみお手持ちのものを掛け、他は銀無垢の現代物を用いてシンプルながら堅牢な革包半太刀拵を求めたいとご相談を受けました。半太刀拵はどちらかといえば幕末期に多い様式ですが拵を革ですっぽりと包む革包みは鎌倉期のものに多く見られる特徴です。 これについてご希望をお伺いしたところ鎌倉期の力強い雰囲気が良いということで「もし鎌倉期に半太刀拵があったなら」という仮想の拵様式を実現しました。

お預かりをした鍔は鉄地で長丸形の長州鍔日本美術刀剣保存協会の特別保存を受けた刀装具です。雲龍の肉彫りが見事で、長藩岡知賢と銘を切ります。長州藩の名金工として名を馳せる岡本家の五代目知賢の作でしょうか。 本刀の茎と本鍔の茎穴はほぼぴったりだったため、文化的価値の保全も考慮して責金などはせずそのままの状態で掛けました。 切羽は銀地で新調をしました。掻通し樋に合わせておつくりしています。

現代物でちょうど良い半太刀金具のご用意がなかったため、銀地の太刀金具を流用しました。縁金・兜金の上からすっぽりと豚のシボ革で包み、拭漆を掛け、牛の中低糸(なかびくいと)で平巻にしたのちに黒漆を掛けた柄前です。鳩目金具のみ革包の外に出しています。 中低糸とはその名のとおり糸の真ん中が低くなった糸です。一段低くなっている幅が広いと鎌倉期の力強い雰囲気となり、低い部分の幅がなければ細糸二本が連なっているようになり幕末期の印象になります。このたびは前者の仕立てでおつくりしました。

鞘も同様に銀地の太刀金具を使い豚のシボ革で包みました。テントのように張ってしまう状態を避けるため栗形は単独で革包みとし革に穴を開けて出しています。革で包んだのちに全体に拭漆を掛けているため不自然さはありません。 柄前の鳩目金具と同様に、栗形のシトドメ金具も革包の外に出しています。このシトドメ金具も銀地であらたにおつくりしました。また下緒は柄糸と同じ革をつかっておつくりしています。

革包を行う前の拵下地の様子です。この柄下地に鮫皮を着せて柄巻をし鞘下地に鞘塗をすれば通常の半太刀拵になります。 本作は実用の御刀・拵ではありませんが、ご依頼者様のご希望により鞘の腰の刃方に補強の角(つの)を入れています。また栗形は革包の都合から製作時に垂直に抜き差しできるようにつくっています。

もともと本刀は白鞘入りでしたが、経年劣化などを考慮しこの機に白鞘も新調させていただきました。良い材を選別し御刀の姿に見合った素晴らしい白鞘になりました。目釘は水牛角の角目釘で鳩目がつきます。

御刀は丁寧にお手入れがなされており大きな傷・深錆などは見当たりませんでした。しかし経年のためところどころにヒケがあり小傷も見受けられることから、研磨のご依頼もいただきました。 刀部の最上研磨にて仕上げ直しを行い、備前物らしい地景が見える良い状態に改善しています。

工作内容詳細

※表示する価格は受注当時のものです

価格
1,150,000円台
御刀
刀 (金象嵌)兼光 66.3センチ
研磨
最上研磨
はばき
現状のもの
切羽
新作 銀地本切羽(1ミリ厚、掻通し樋)
持込品
拵下地
新作 革包半太刀拵 鎌倉期狙い(鑑賞作)
柄地
豚シボ革で革包に拭漆掛け
柄巻
黒色牛革中低糸 平巻、漆掛け
縁頭
銀地 太刀金具
目貫
M-035-MSV0 銀地 金剛杵図目貫
鞘塗
豚シボ革で革包に拭漆掛け
工作
刃方補強
栗形
新作 銀地シトドメ金具(座金2枚)
下緒
新作 共糸下緒(黒色牛革)
金具
銀地 太刀金具
白鞘
新作(鑑賞作)
工作
鳩目
継木
木はばき付き

お客様の声

大変お世話になっております。お願い致しておりました拵一式、 本日確かに受領致しましたので御報告申し上げます。 永らくご尽力賜り、誠にありがとうございました。イメージ通りの 素晴らしい仕上がりで、大変満足致しております。枕刀として自室 では常に手元に携えようと思います。

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